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2007.05.02

伊坂幸太郎「フィッシュストーリー」

Img_7011 久しぶりに伊坂幸太郎の本を読みました。

フィッシュストーリー

 「動物園のエンジン」
 「サクリファイス」
 「フィッシュストーリー」
 「ポテチ」

4つの中短編小説で構成されています。

本のタイトルになっている「フィッシュストーリー」。

読み終えて、本の帯にある”時空を超えて奇蹟を起こす”の意味が判りました。

20数年前、現在、30数年前、10年後、と時間を行ったりきたりしながら続いていくストーリー。それが全て、「人を救う」というキーワードで繋がっている。

30数年前、売れないバンドがラスト1曲でレコーディングした「フィッシュストーリー」が、ハイジャックから乗客を救う現在の青年を誕生させることになるカップルの20数年前の出会いとなり、ハイジャックで救われた女性が10年後にネットワークのセキュリティを突いた犯罪から世界を救うことになる。

人が行うことの全てには意味があって、そのひとつひとつがちゃんと繋がっているんだ、と思わせてくれます。

正義の味方というと鼻白んでしまうけれど、ハイジャック犯をこらしめる瀬川はまさに<正義の味方>。「お礼は父に」、という彼が最高にかっこよかった。

「僕の孤独が魚だとしたら・・・」「僕の勇気が魚だとしたら・・・」「僕の挫折が魚だとしたら・・・」。この繰り返しも効果的に使われていました。

けれど、個人的には「ホテチ」が一番好き。淡々としていて最後にホロリ、とさせる話に私は弱いのです。

のんきな空き巣狙いの青年・今村。けれど、彼が抱える悩みは大きい。

彼は母親と自分の血液型から、自分が母親の本当の子供ではないことを知ってしまう。

調べた結果、生まれた病院で赤ん坊の取り違えがあり、母親の本当の子供は、今でこそ控え選手だけれど、彼が子供の頃から常に野球の才能を有望視されていた尾崎というプロ野球選手。

だから、彼は、自分と尾崎選手を比較して、母親に対して「本当だったら、もっと優秀な息子を持てたかもしれないのに。」という申し訳ない気持ちを持っている。

母親はそのことを知らない。彼は母親が好きだから、その本当の息子である尾崎を異常なほどに応援する。

そこに、彼の仕事の先輩・黒澤やガールフレンドが絡んで、万年控えの尾崎をバッターボックスにひっぱりださせ、そして、ここ一番の場面で尾崎は。。。

そうなるだろうなと思った流れでも、やはりそうなることは感動的で、非常にいいお話でした。

なんか判る。子供が母親に褒めてもらいたい、よく出来たね、と言われたくて頑張るのだけれど、うまくいかなくてガッカリしてしまう気持ち。この今村と母親の関係がとっても微笑ましくて、またホロリなのです。

タイトルの「ポテチ」。これは、彼のガールフレンドが、コンソメ味食べたいと言ったのに、間違って塩味を食べてしまい、はじめはご機嫌ナナメだったけれど、「コンソメ味が良かったけれど、塩味は塩味で食べてみるといいもんだね。間違えてかえって良かった」というところから来ているのでしょうね。

ポテチのコンソメと塩の取り違いは、今村と尾崎の取り違い。でも結果オーライじゃん。ってことでしょう。

久しぶりに伊坂幸太郎の本を読んで、ずっと前に「死神の精度」を読んだ時に感じた、<ぶっきらぼうで淡々、だけど温かい>という彼の本の空気を思い出しました。

アマゾンのレビューに、この本を読むには、「重力ピエロ」「ラッシュライフ」「オーデュボンの祈り」を読んでおくとなおよしとありました。逆になってしまいましたが、早速読んでみようと思っています。

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